「ボーイフレンド」(Netflix)と「いちばんすきな花」(フジ)からみる、視聴者たちの“浄化”への欲求【梁木みのり】
孤立した都会人が再び人との繋がりを求める……という流れは、ムラ社会の復活とは必ずしもイコールではない。ムラ社会的な構造に近いのは、STARTO系グループだ。現在第一線で活躍しているグループほど、すでに長い期間をメンバーと過ごしており、初めてグループとして集められる際も、事務所の歴史が長いだけに、STARTO系のノリや人間関係の前提が共有されており、ゼロから歩み寄り合う必要がない。
一方、「ボーイフレンド」や「いちばんすきな花」は、全く異なるルーツを持った個人たちが互いに歩み寄り、まっさらな状態から最適なコミュニティを形成していく。人々は、村社会から脱却した、新時代の繋がり方を欲しているのだ(それが実現するかは別として)。
日本のアイドルグループでは実現不可能かというと、そうではない。たとえばINIは、オーディション番組から生まれ、10人の日本人の中に1人の中国人メンバーを擁する。まさに“見ず知らずの人たちがひと所に集まり、絆を育む”構図だ(ちなみに「ボーイフレンド」にも、韓国・台湾・ブラジルにそれぞれルーツを持つ参加者がいる)。
INIはYouTubeのバラエティコンテンツの中で、メンバーが何か失敗しても決してからかわず全員で褒めるという、テレビ全盛期のバラエティ番組とはおよそ真逆の態度を取り続けている。まだBTSやSEVENTEENのような強いメッセージ性には結びついていないが、新時代の“浄化”系アイドルとして花開きうるポテンシャルは、十分にあると言える。
今後、STARTOから“浄化”系グループが現れなければ、彼らは時代に取り残されていくだろう。ステージの上や画面の向こうで仲良くキラキラしていればいい時代は、もう終わったのだ。
文:梁木みのり